口訳万葉集/百人一首/新々百人一首(池澤夏樹=個人編集 日本文学全集02) その1

今回は口訳万葉集/百人一首/新々百人一首(池澤夏樹=個人編集 日本文学全集02)です。

こちらは前回の現代語訳古事記に引き続き日本文学全集の第二巻となります。

読み終わった部分から感想を上げるため複数回に分けて上げていきます。(読むのが遅いためです)

今回は最初に収録されている口訳万葉集(折口信夫)についてです。

折口信夫による万葉集の口語訳。知られた歌を中心に200首選ばれています。
構成は歌と訳文のみのシンプルな構成であり、解説は控え気味に時折入る程度です。

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訳文は子どもにも読める程度のかなり簡便なものですが、洗練されているというか、歌の芯というべき部分にきちんとスポットライトを当てたものになっています。一首ごとの説明は少なめでも、きちんと作品世界を感じることが出来るように考え抜いて言葉を選んでいる印象を受けました。

  

このように訳文については国文学者という日本語のプロの仕事を感じさせるものですが、読み進めるにつれ、著者の人物像について複雑な印象を感じ始めました。

その理由の一つは、中盤くらいから解説文に「傑作・佳作」の評価が出てくるようになり、序盤との一貫性がないまま進んでいく点があります。

これについて著者の序文によると、編集作業の途中で傑作・佳作の評価を入れ始めたため序盤では記載がないとのことです。しかし、ほぼ完ぺきな訳文を練り上げる文学者がこのような「美しくない仕事」をするものでしょうか。

 

これについて、添付の小冊子の中で穂村弘氏が著者の印象について「異様な本当さ」と表現しています。
著者の中には、歌やこころの真実をどこまでも追及する「ほんとうさ」と、人の目も体裁も気にしない「異様さ」が共存しているのでしょうか。

 

ここまで考えて著者折口信夫について「小市民の感性から外れた超人然とした人物」とといった印象を受けました。個人的には上記の「異様さ」がかなり苦手ではありますが、美に対して突き抜けていく強さは惹かれます。

 

本編の口訳万葉集は和歌初心者向けの分かりやすいつくりです。一方で著者の「折口信夫」は人物像が複雑で、yamatakaには大分早すぎた印象を受けました。

 

次回は同書の続きの前に死者の書(折口信夫)の感想を上げる予定です。

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amzn.to

*1:万葉辞書などの解説文は本書では採られていません。原著や訳者の他書に詳細な解説があります。

*2:本当は本エントリーを書く前に折口信夫をもう少し知ろうとして読み始めましたものですが、読むのが遅いので本エントリーを先に書いてしまいました。