源氏物語 中 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集05)

今回は源氏物語 中 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集05)を読みました。*1

上巻では光君の出生からまばゆいばかりの青年時代、須磨・明石への蟄居を経て、六条院の建設までの物語でした。
中巻では舞台を六条院に移して光君の栄華とその終焉が展開されます。

 

 

登場人物は成長していき、息子たちが主役の時代になります。
栄華は頂点に達し、その後の愛する人の死と光君の衰退が描かれます。

 

中巻の最後の幻巻を読み終わって感じるのは、上巻からだいぶ長い時間が経ったな…という感慨です。
光君の老いの表現は少しずつ散りばめられていて、その都度思い知らされていたのですが、それでも相当遠い所に来てしまったなという感じは抱いてしまいました。
光君の出生から栄華、晩年までの物語にとっぷりと物語に漬かっていたなぁ…と思い返されます。
読むのにもそれなりの時間がかかる作品ですが、その時間は有意義なものだと確信があります。この「時間を有意義に使った」という感覚が長編小説小説の醍醐味なんだなぁと本書を読みながら感じました。

 

また幻巻において長恨歌が再び引用されていることが印象的でした。
長恨歌は最初の桐壺巻でも引かれています。玄宗帝と光君の関係は考えたら面白そうですね。
光君と葵の上の関係は玄宗帝と楊貴妃の関係をベースにしつつ紫式部の理想の夫婦像を重ねているのかもしれません。
そして人相占いに天皇に即位すると世が乱れると言われている点など、よくよく考えれば関連する内容がいろいろ出てきそうです。

 

次回は書けるひとになる! 魂の文章術 | N・ゴールドバーグの予定です。 
その後はハンターギャザラー | 鴻池朋子を読んでいよいよ下巻の宇治十帖を読むつもりです。

 

amzn.to

*1:上巻のエントリーでは丸谷才一光る源氏の物語」と「輝く日の宮」を読むと書きましたが、先入観なしに通して読もうと思いこれらは読んでいません。これらを読むのは下巻を読了した後にします。