5月6日(水曜)の日経新聞より「人生は短いんだ」
5月6日(水曜)の日経新聞の「私の履歴書」のコーナーではっとさせられる文章があった。
女優の岸恵子さんによる戦後直後の述懐だ。
岸さんは女子高では学級委員を務めていたが、嫌味な英語の先生から目を付けられていたというあたり良くも悪くも目立つ存在だったようだ。
そんな岸さんはある日、苦手な数学のテストを半分白紙で提出し、担任の先生に自宅に呼ばれてこっぴどく叱られてしまう。
「君は怠慢なんだよ。頭はすこぶる良い。だから苦手な数学なんかやらなくて良いと高をくくっていないか?立派な根性だ」
落ち込んで先生の自宅を辞そうとした時、急に先生が苦しそうに咳き込み、岸さんは振り返る。
不安げに見つめる岸さんに先生は夕日を背に優しく笑いかけながら先ほどと違う言葉をかける。
「根性を通せ。君には多くの才能がある。好きなことをやれ。人生は短いんだ。苦手なものはやらなくていい」
この時の先生の言葉が社会に出たあとも岸さんを支えたという。
残念なことにその後先生は胸を病んで亡くなってしまったそうだ。
ここでyamatakaが言いたいのは「苦手なものはやらなくていい」ということではなく、本心から出た言葉しか人に届かないということだ。
先生が岸さんを自宅に呼んで説教したのは、先生という立場で人生の模範を説かないといけないという意識があったのだと思う。
だが苦しそうに咳き込んだ時に、先生の中で何かがあった。
その後岸さんにかけた言葉は先生自身の生き方により近い言葉だったのだろう。
現にその言葉が岸さんの胸にすぅっと入り込み、その後もずっと息づくことになる。
このエントリーを書いている際も、自分は本心で書いているのかどうか考え続けていた。
ブログは大なり小なり誰かに何かを届けたいという思いがあるから書いている、のだと思う。それを本心で書いているのか、というのは今はまだ分からない。
正直分からないものだ。