口訳万葉集/百人一首/新々百人一首(池澤夏樹=個人編集 日本文学全集02) その2

以前書いた口訳万葉集/百人一首/新々百人一首 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集02)のその2です。

その1では口訳万葉集(折口信夫)の感想を書きました。

今回は百人一首(小池昌代)と新々百人一首(丸谷才一)についてです。

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百人一首(小池昌代)

 歌人小池昌代による小倉百人一首の口語訳と解説です。

韻律の読み込みを丁寧に行い、そこから詩情を広げていく姿勢が印象的でした。それは読み手の心情を理解するだけでなく、詩の世界観を大きく広げることができると気づかせてくれます。

文法や一首の背景は十分語られているのかもしれませんが、紙面が少ないため読み足りなさを感じるかもしれません。

新々百人一首(丸谷才一)

小説家・評論家である丸山才一により編まれた彼自身の「百人一首」です。
和歌とその評論から構成されています。書くべきことを全て書くという方針のため、一首を構成する複雑な「詩情の層」を丁寧に分解して解説してくれます。

yamatakaは初学者のため、この「層」という概念が和歌を理解するのに大いに役立ちました。


また時代ごとの歌の評価の変遷にも言及している点も面白かったです。藤原俊成・定家とも明治以降のリアリズムとも適度に距離を取りつつ評論する姿勢には不思議な気持ちよさを感じました。著者の評論家としての腕前でしょうか、著者の他の著作にも興味を持ちました。

また本書に掲載されているのは20首のみのため*1そのうち文庫版を購入して全編通して読みたいです。

全体を通して

全集01の古事記から本書を通して読んで、このシリーズを通して炙り出そうとしている要素が見えてきた気がします。それは演劇性(≒呪術性)と個人性という二つにまとめることが出来ると感じます。(全集を読み進めるうちに考えを改めるかもしれません)

この要素が次巻以降でどのように発展し、そして現代文学に帰結していくのか。次巻以降ではこれらの点に着目して読んでいきたいです。

 

次回は日本文学全集03 竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記の予定です。

 

*1:それでも本書の紙面の半分ほどを占めます。